EU理事会と欧州議会は、市場安定化準備金(MSR)に保有されるEU炭素排出枠を無効化するしきい値を7億に引き上げることで暫定合意したと、Carbon Pulseは報じています。EU ETSのバイヤー、投資家、コンプライアンス担当者にとって、この妥協案は、供給過剰への備えを維持しつつ、市場の安定化に利用できる排出枠をより多く確保するものです。

共同立法者が合意した内容

合意は2026年10月21日に成立したと、Eunewsは伝えています。しきい値は4億排出枠から7億排出枠に引き上げられます。2031年1月1日以降、準備金内でその水準を超える排出枠は無効化されます。

現行ルールでは、準備金内の4億を超える分はすべて無効化されることになっていました。合意により、2つのしきい値の間にある排出枠は取り消されません。需給の不均衡に対処するため、準備金内にとどまります。

共同立法者はまた、全体として一貫したアプローチを確保するため、上限を毎年段階的に引き下げることでも合意したと、Eunewsは述べています。

欧州委員会案に対する妥協

この合意は、欧州委員会の当初案を修正するものです。委員会は、無効化メカニズムを直ちに、かつ無期限に停止することを提案していました。これにより、無制限の追加排出枠が緩衝材として準備金内に残ることになっていたでしょう。

議会と理事会は中間的な道を選びました。しきい値は、テキストが「十分に大きな」と表現する、不均衡を吸収できる規模の準備金を維持しつつ、委員会のアプローチが生み出しかねなかった排出枠の過度な蓄積を避けるべきものとされています。

理事会が重要だとする理由

理事会は、この合意によりMSRが変化する市場環境に対応する能力が強化されると述べています。これには、全体の排出上限が引き続き低下する中で、2030年代半ば以降に供給が縮小する可能性も含まれます。更新されたルールでは、必要な場合に排出枠を放出することが可能であり、理事会はこれを、極端な価格変動から欧州産業を守るものと位置付けています。

同時に理事会は、このセーフガードが排出枠の供給過剰に対する明確なシグナルになるとしています。掲げられた目的は、炭素市場とMSRの秩序ある機能、長期的な予見可能性の向上、そして2040年および2050年のEU気候目標との整合です。

政治的な反応

議会の報告者で環境委員会委員長のPierfrancesco Maran氏は、この合意は気候変動対策への野心と産業競争力が両立でき、また両立すべきであることを示していると述べました。理事会の輪番議長国であるアイルランドの気候・エネルギー・環境相Darragh O’Brien氏は、バランスの取れた結果だと評価しました。同氏は、産業に即時の柔軟性を与えつつ、価格の安定と市場の健全性の保護を確保するものだと述べています。

市場の反応

価格の動きは限定的でした。EU炭素排出枠は2日連続で小幅に上昇したと、Carbon Pulseの市場レポートは伝えています。5日ぶりの高値までの早い段階での急伸は2時間以内に解消され、その後は数時間にわたってもみ合いが続きました。同レポートはまた、共同立法者がMSRの変更に関する最終決定について、正式採択され次第発効することで合意したとも記しています。

反応が小幅だったことは、結果がおおむね織り込まれていたか、無効化の日付が2031年であるため実際の影響は数年先と見られていることを示唆しています。元の資料には説明がないため、これは報じられた事実ではなく解釈です。

バイヤーと投資家への示唆

コンプライアンス目的のバイヤーにとって、しきい値の引き上げは、2030年代初頭に現行ルールよりも永久に除去される排出枠が少なくなることを意味します。これは長期的な供給見通しに影響しますが、資料は価格への影響を定量化していません。

投資家にとっては、2030年代半ば以降に供給が逼迫した場合に、準備金が排出枠を放出する余地を持つことになります。これは価格の急騰を抑える可能性がありますが、上限の低下による希少性の効果を制限する可能性もあります。そのバランスは準備金がどのように運用されるかに左右され、合意はそれをメカニズムの運用に委ねています。

炭素価格の参照としてEU ETSの価格を注視する自主的市場の参加者にとって、この決定は、政策当局が価格の安定と希少性をどう比較衡量しているかを示すシグナルです。

注目点

  • 欧州議会と理事会による合意の正式承認。Eunewsによれば次のステップです。
  • 発効の時期。Carbon Pulseによれば、正式採択に続きます。
  • 上限の年次引き下げの詳細。資料では大まかにしか説明されていません。
  • 正式な採決が完了した後の排出枠価格の動き。

暫定合意はまだ法律ではありません。両機関が確認するまで、7億というしきい値は、ルールではなく原則的な合意にとどまります。